電動スーツケースが日本国内で発検挙、発展する電動マイクロモビリティ業界と交通ルール周知に不協和


はじめに


電動スーツケースと呼ばれる乗り物をご存じでしょうか。特に若者の間で人気が高まり、その利便性と楽しさが話題となっています。一方で日本国内発となる電動スーツケースの違法走行が検挙され、物議を醸しています。近年では、電動キックボードを始めとする電動マイクロモビリティの一部が運転免許不要となったこともあり、利用者が増加しています。
この記事では、電動スーツケース摘発やLUUPの新しい車両タイプ発表から見る日本のマイクロモビリティの現状と課題について解説します。
この記事を読み終えると、電動スーツケースの検挙理由、日本のマイクロモビリティシェアの利点や問題点の理解が深まります。

電動スーツケースという比較的新しい電動マイクロモビリティですが、国内初の検挙が話題となっています。
そもそも電動キックボードは良くてなぜスーツケースはダメなのか、何が問題となったのかなど、LUUPのシェアサービスなどの内容も交えて日本の電動マイクロモビリティ事情について解説していきます。


電動スーツケースとは


話題の電動スーツケースとは電気原動機を搭載した乗ることが出来るスーツケースです。
実際にスーツケースのように荷物を収納が可能で、移動の際はケースに跨ってハンドルを使用することで旋回、アクセルやブレーキが操作可能で、スクーターのように低速走行することができます。
基準を満たしていれば飛行機の機内にも持ち込むことも可能で、旅行先での短距離移動に便利な点や、その見た目や面白さから海外を中心に若者の間で人気となり、日本でもインフルエンサーに乗れるスーツケースとして取り上げられるなどして注目を集めました。


電動スーツケース国内発の検挙


そんな話題の電動スーツケースですが、今月国内で初めて歩道での走行が検挙され、物議を醸しています。
摘発された電動スーツケースは時速13kmの走行が可能なモデルで、アクセルやブレーキも搭載されていたとされています。
今回検挙された中国籍の留学生の女性は無免許での走行で書類送検される形となりました。
この電動スーツケースですが、そもそも運転免許が必要なのか、免許を所持していれば歩道を走行可能なのかという疑問が話題となっています。

参照:「外国人使用がほとんど」電動スーツケース、公道走り初摘発 関係者は「懸念が現実に」 – 産経ニュース

実際のところ報道でも運転免許の不所持やナンバープレートの非装着など見解が異なるようなのでイマイチつかみどころがないですよね。
SNS上でも免許があったら問題なかったのかなど疑問の声も上がっています。
それでは電動スーツケースが日本ではどういった区分になるのか考えていきましょう。


日本における電動スーツケースに関する法的見解


結論から言ってしまえば運転免許証を所持していたとしても電動スーツケースでの公道や歩道の走行は法律上問題があると言えます。
その為運転免許を持っているからと言って公共の場で電動スーツケースを運転することは取り締まりの対象となる可能性が非常に高いのでお勧めできません。

令和5年7月1日施行の改正道路交通法によって電動キックボードなどの「特定小型原動機付自転車」に該当する車両は16歳以上であれば運転免許が不要となりました。
この改正に伴い、代表的な電動キックボードシェアサービスのLUUPの利用についても現在は運転免許が不要となっています。

参照:道路交通法の改正のポイント – 一般財団法人 全日本交通安全協会

今回の電動スーツケース運転免許の不所持が原因で摘発されたのはなぜでしょうか。
そしてなぜ運転免許を仮に持っていたとしても取り締まりの対象となるのでしょうか。

この疑問については電動スーツケースが「特定小型原動機付自転車」に該当するかどうかが焦点になります。


特定小型原動機付自転車における保安基準


下記は国土交通省の定める「特定小型原動機付自転車」の基準です。
基準を見る限り電動スーツケースは全て表の特定小型区分の基準以内となっています。

では、なぜ歩道や公道での走行が違法となるかについて見て行きましょう。

参照:自動車:特定小型原動機付自転車について – 国土交通省

保安基準

下記の図は同じく国土交通省の定める特定小型原動機自転車の保安基準です。

参照:自動車:特定小型原動機付自転車について – 国土交通省

詳しく見て行くとヘッドライトやクラクション、速度のメーター、ウィンカー、走行安全性など様々な基準があります。

特定小型として扱われるにはこれらの標準搭載が条件となっており、且つ保安基準を満たしていることを証明する特別なシールが車両の目立つ場所に貼付されている必要があるようです。

また、「特定小型原動機付自転車」として認定された車両であってもナンバープレートの取得と車体への装着が必要とされています。

参照:特定小型原動機付自転車について(ナンバープレートについて)|総務省

今回の電動スーツケース検挙の根拠については各メディアでナンバープレートが無かったことを根拠とするものや、運転免許所の不所持を根拠とするものなど解釈に違いがあるようです。

逆に言うとナンバープレートやヘッドライト、ウィンカー、速度計などの保安基準を満たす装備と走行の安定性が保障されていれば電動スーツケースの走行も現行法上では問題はなさそうですね。
現実的にはスーツケースという特性上大きさや重さを度外視してまで走行可能な装備や安定性の向上をさせるほどの需要は見込めないでしょう。



電動マイクロモビリティの


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電動スーツケースの発想やデザイン自体は非常にユニークなアイデアですが、日本の法律上では歩道や公道だけでなく、公共の建物の中でも違法となるということになるでしょう。
実際のところは、電動スーツケースのような特定小型に含まれない電動モビリティの大半は法律上殆どの場所で走行できないものばかりです。
一時期流行したハンドルのないセグウェイのような乗り物のバランススクーターも同様の扱いとなります。
特定小型原動機付自転車に含まれない電動モビリティでも私有地であれば走行に問題はないでしょう。
人通りの少ない公園であれば問題ないとする解釈もあるようですが、実際のところその根拠は曖昧なようです。

保安基準に満たない電動マイクロモビリティは法律をクリアして乗ることが出来る場所やシーンがほとんど存在していない為、ルールを破って軽い気持ちで乗る人はまだまだ現れそうです。


LUUP電動シートボードの発表


今回摘発された電動スーツケースが問題視される一方でLUUPが電動キックボードのスクーター型を発表したことで話題となっています。

電動キックボードシェア事業を提供する「LUUP」は6月25日、新たに「電動シートボード」の展開を発表しました。
従来の電動キックボード、電動アシスト自転車に続く新たな車両タイプとして発表された「電動シートボード」には座席が搭載された小型の車両設計が予定されているようです。

見た目は小型のスクーターのようなデザインですが、従来のタイプ同様の特定小型原動機付自転車の区分の為、電動キックボードと同様の走行が想定されています。
これらの車両が、免許不要で利用できる点が大きな利点です。
一方で、交通ルールを守らない運転者も多く事故やトラブルも発生しています。
電動スーツケースの摘発が報道されたタイミングも悪く、原付バイクのような見た目で歩道の走行も可能なことから安全性やマナー悪化を懸念する声も上がっています。

LUUP電動シートボードの特徴

参照:Luup、座席・カゴ付きの特定小型原付「電動シートボード」を発表 | Luup(ループ) | 電動キックボードシェア/シェアサイクルアプリ

今回の発表はタイミングが悪かったですね。
スクーターのような座席が備わった新しい車両タイプの発表と電動スーツケースの検挙の話題の時期がかぶってしまったことで少々ネガティブな意見が見られます。
元よりLUUPの展開するサービスには安全性や交通ルールの問題が懸念されていましたが、今回良くない形で蒸し返されてしまったようです。
UberやAmazon、OpenAIなんかもそうですが、画期的なサービスに懸念材料はつきものですので、どのようにして懸念が解消されるかが重要ですね。


日本の交通事情と電動マイクロモビリティの普及


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近年LUUPの電動キックボードシェアの利用者増加に伴って電動マイクロモビリティへの注目が高まっています。
運転免許を持っていない人でも利用できる点や、利用可能なポートが圧倒的に増えたことで今や交通インフラの新たな選択肢として生活に溶け込んでいます。

特に外国人旅行者にとっては旅先での貴重な移動手段となっているようです。
日本の複雑な電車の乗り換えや混雑する電車内の煩わしさがなく、道中でも景色や観光を楽しむことが出来ることから非常に人気の移動手段となっています。

一方、日本では自転車や特定小型原動機付自転車に関する取り締まりはつい最近まで非常に寛容であった為、交通ルールが依然として形骸化している側面があります。
こうした背景から、電動マイクロモビリティのような車両でも同様に無謀で危険な運転が頻繁に見られており、問題視されています。

現在LUUPでは独自の利用者への点数制度を導入しており、一定回数の違反が確認された場合一時的な利用停止やアカウントの凍結などのサービスの健全性と安全性向上の対策も進められています。
また、サービスの利用にはアカウント取得時に実施されるアプリ上での交通ルールのテストで全問正解する必要があるなどの合理的なハードルも設けられているようです。

参照:LUUP(ループ) | 電動キックボードシェア/シェアサイクルアプリ|交通違反点数制度


電動マイクロモビリティの正しい利用と発展


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電動マイクロモビリティを安全に利用するためには、いくつかのポイントに注意する必要があります。まず、法律を遵守し、必要な免許や装備を整えることが重要です。
今回話題となっている電動スーツケースやその他の道路交通法で路上の走行が認められない移動用デバイスの使用には事前に走行可能な場所かどうかの注意が必要です。
また、走行時には周囲の状況に注意し、安全運転を心がけることが求められます。

電動マイクロモビリティは画期的な移動手段のイノベーションとして今後も発展が期待されており、日本の交通インフラの新たな可能性を切り開く重要な市場です。
危険な走行や事故の多発で過剰な規制を行わなければならない状況は、このような革新的な技術やサービスにとって好ましくないでしょう。
一人ひとりがルールを守って走行することで、更なる発展と革新的なサービスへの成長に繋がるという事を改めて意識することが重要です。


まとめ


電動スーツケースについての摘発については現行法では妥当な判断と言えるでしょう。
ただし、このような最新の技術やツールには規定や根拠が曖昧なまま整備が十分に追い付いていないことや、妥当性の見直しなどの検討が必要です。
また、画期的で便利なサービスや技術には常に安全性などの問題が付きまといます。
懸念される問題が一つずつ解決されていくことで、より安全で便利な社会へ発展していくことを期待しましょう。

いかがでしたでしょうか、ユニークな見た目でついつい乗ってみたくなる電動スーツケースですが、基本的には歩道や建物の中などでも利用は難しそうです。
利用できれば駅構内や空港なんかの長い距離を歩かずに済むので非常に魅力的ではありますが周囲への迷惑や安全性を考えると妥当と言えるでしょう。
LUUPが発表したシートボードも話題ですが、駅や空港内を適法で移動できるマイクロモビリティの展開なども将来的にはあり得るのかもしれませんね。

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関連リンク


参照文献:

「外国人使用がほとんど」電動スーツケース、公道走り初摘発 関係者は「懸念が現実に」 – 産経ニュース
道路交通法の改正のポイント – 一般財団法人 全日本交通安全協会
自動車:特定小型原動機付自転車について – 国土交通省
特定小型原動機付自転車について(ナンバープレートについて)|総務省
Luup、座席・カゴ付きの特定小型原付「電動シートボード」を発表 | Luup(ループ) | 電動キックボードシェア/シェアサイクルアプリ
LUUP(ループ) | 電動キックボードシェア/シェアサイクルアプリ|交通違反点数制度


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